私は、YouTubeをよく見るのですが、その中でも好きなコンテンツの1つに「記者会見」があります。最近では新聞社などのメディアがYouTubeに動画を掲載してくれたりするんですよね。テレビのニュースだと部分的に切り取られてしまいますがYouTubeだと全編見れたりします。
一言で記者会見といっても様々ありますが、謝罪会見などネガティブなテーマが多い気ですかねぇ。ただ、そういう緊張感がある場所での対応の仕方はけっこう参考になるんですよね。ってことで、今回は2015年に私が見た記者会見で印象に残ったものベスト5をご紹介したいと思います。
ゼンショー 労働環境改善に関する記者会見
概要
いわずとしれた牛丼チェーン店「すき家」ですが、ブラック企業と揶揄されたことでも有名ですよね。確かに「ワンオペ」と言われる深夜のひとり勤務など労働環境の問題点はあったみたいです。
これを受けて「すき家」の運営元であるゼンショーHDが、2014年7月に労働環境に関する調査を第三者委員会に依頼しました。この会見は、その後に労働環境がどのように改善されたか?を説明する目的で2015年4月8日に行われました。
私の注目ポイント
私がこの会見で率直に疑問に思ったのが、「この会見は何の目的でやってるんだろう?」ということです。一企業の労働環境問題についてなんだから、粛々と自社内で改善していけばいいのに…。まぁ、ブラック企業は社会問題になってますし、ゼンショーHDとしてもそのレッテルを貼られるわけにはいかない!ということで対外的にアピールしたかったんでしょうかねぇ。
そんで、この会見、約半分の時間が会長さんの挨拶なんですよねぇ。しかも話の内容がちょっと自慢話っぽい…。会長さんなんで相当の成功体験をお持ちなんでしょうが、私は自慢話ばかりする人をどうも信用できません。この会見の趣旨からしても、話す内容をもう少し考えたほうが良かったんじゃないかと思いました。
ちなみにゼンショーHDは、2015年3月期の純損益で上場来初となる赤字に転落しちゃいました。今後、一連の対応がどういう結果につながるかウォッチしていきたいですね。
関連動画
新国立競技場問題に関する安藤忠雄氏の記者会見
概要
オリンピックに向けて建て替えを予定している新国立競技場について、当初はコンペにてザハ・ハディド氏の案が採用されました。しかし、設計フェーズになって建設費が予定より大幅にアップしていることが発覚しました。
この対策の一環で有識者会議というものが2015年7月7日に開かれましたが、コンペで審査委員会の委員長を務めた安藤忠雄氏は都合により欠席。これに対して批判が出たということもあってか、安藤氏が2015年7月16日に会見を行いました。
私の注目ポイント
安藤氏が会見で言っているポイントは、「自分が依頼されたのはデザイン案選定フェーズだけ(その後の設計フェーズはノータッチ)」「選んだ責任はあるが、なぜ2520億円になったのか私も聞きたい」ということですね。
これを聞く限りでは、デザイン案選定フェーズの担当者が設計に関わっていないことでゴタゴタしてるっぽいですね。設計フェーズの担当者からすれば「このデザインでやれって上から降ってきたけど実際に見積もりしたら費用がすごいことに…、デザイン選定でちゃんと費用の検討してんの?」って感じでしょうね。
プロジェクトを進めるにあたって問題が発生して前フェーズに手戻りすることは有り得ることだと思いますが、その辺りのマネジメントをちゃんとしないと迅速に対応できません。
私は仕事でITシステムの構築することがありますが、だいたい全体統括するプロジェクトマネージャ(PM)がいます。そういう意味では新国立競技場建設のPMって誰なんでしょう?オリンピックの諸問題は、組織体制がはっきりしないことが原因の一つのような気がしますね。
結局、ザハ氏案は白紙撤回され、再度デザイン案を選定することになりました。もう大丈夫だよね?
オリンピックエンブレム問題に関する記者会見
概要
ベルギーのリエージュ劇場から提訴されたことをきっかけにしてゴタゴタしまくったオリンピックエンブレムですが、最終的に取り下げが決定するまでに何度か会見が行われました。
この会見は2015年8月28日に行われたエンブレムの原案が公開されたもの。オリンピック組織委員会と審査委員長の永井一正氏が出席して選考過程を詳しく説明してます。
私の注目ポイント
先日、エンブレム選考過程で不正投票があったことが発覚しました。
2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は18日、佐野研二郎氏がデザインし、撤回した旧エンブレムの選考過程に関する調査報告書を公表し、1次審査で不正投票があったと明らかにした。一方で佐野氏の作品はいずれの審査段階でも最多得票で通過しており、佐野氏の作品を選考した過程に問題はなかったとした。
出典:日本経済新聞
これを把握した上で一連の会見を見ると、いかに説明が不誠実だったかが分かります。現在、再公募しているエンブレム選考ではこの教訓を活かして欲しいですね。
また、個人的に気になったのが、永井氏の「自分大好き感」です。ことあるごとに永井氏がデザインした札幌オリンピックエンブレムの話をしてますし、佐野氏のデザインがそれを継承するものだとも言っています。ご自身の仕事を自画自賛するのは悪いことではない思いますが、多角的な視点でエンブレム選考が行われたのかちょっと疑問に感じました。
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東芝 不適切会計に関する記者会見
概要
東芝が「不正」ではなく「不適切」という言葉が使われたことが。事の発端は、2015年2月12日に東芝が証券取引等監視委員会からの報告命令を受けたことから始まります。ここから東芝は特別委員会を設置して調査を行いますが、一部の会計処理で問題点が発覚したことから、さらに第三者委員会を設立して広範囲な調査をはじめました。
この会見は2015年7月21日に行われた第三者委員会の調査報告を受けての会見です。「不正」ではなく「不適切」という言葉が使われたことが話題になりましたね。
私の注目ポイント
冒頭に田中社長が引責辞任すると述べています。でも、記者からの質問では「不適切な会計処理があったことを認識していません」と答えています。じゃあ、なんで辞めるんでしょう?さらに、この時点で田中社長を含めて全取締役16人のうち8人が辞任しています。これどう考えても「不適切」ってレベルじゃないでしょ。
また、多くの回答で田中社長は「第三者委員会の報告書を見てください」「個別の事案にはお答えできません」と言って事実上何も答えてません。いろんな影響が考えられるので言葉は超慎重に選ばなきゃいけないとは思いますが、だったらなんで会見を開いたの?って感じ。誠実さは伝わってきませんね。
それに、田中社長の話すスピードが遅くて不明瞭。あのノラリクラリした話し方は質問する気を失せさせるために、わざとやってんじゃないか?と勘ぐりたくなっちゃいます。
もうこういう会見って、ある程度ホンネで話したほうが良いんじゃないですかね。タテマエで話してもいずれ追求されるんですから。先日発表された報道によると、辞任した歴代社長を刑事告発する動きもあるようですので、まだまだこの問題は現在進行形ですね。
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事実上の国会閉会を受けて安倍首相の記者会見
概要
この会見は、事実上の国会閉会を受けて安倍首相が2015年9月25日に首相官邸で行ったもの。直近に成立した安全保障関連法についての話がメインでした。
私の注目ポイント
安全保障関連法の成立については強行採決と言われたように賛否両論あったわけですが、私がこの会見で注目したいのは会見の運営方法、特に記者からの質問についてです。記者からの質問は、以下の流れで行われました。
- 1.幹事社である産経新聞・フジテレビからの質問
- 2.幹事社以外からの質問
幹事社以外からの質問では司会者が挙手した記者を指名することになっいて、共同通信社・ウォールストリートジャーナル・NHKがあたっています。ちなみに、共同通信社・NHKは、自民党の記者クラブである平河クラブに所属しています。それで、司会者が最後のNHK記者を指名するとき「じゃあ、原さんどうぞ、んっ、原さん手あげてなかった?」と変なことを言っています。
一部の報道によると、このNHK記者は挙手しておらず、なおかつ他のメディアで挙手していた記者は多数いたみたいです。このことから、記者会見が政府の都合の良いようにコントロールされているという疑念が生じてきます。そういえば、以前に自民党がメディアに公正中立を要望する趣旨のペーパーを送ったということもありましたね。
メディアは国民の知る権利に奉仕する役割を担ってますんで、記者クラブとか関係なく自由に質問させてくださいね…。
まとめ
振り返ってみると2014年は号泣会見など会見が豊作の年と言われていますが、2015年はそこまでの爆発力がある会見はなかったですねぇ。いや、そんな会見はなくていいんですけどね…。
今回選んだ5つを見てみると、どれもネガティブな理由で選んじゃってますね。一応、素晴らしい会見も選ぼうとしてるんですけども、あんまりないんですよね。来年はそういう会見があることを期待したいと思います。